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東京地方裁判所 平成12年(ワ)5488号 判決 2000年9月08日

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

猪瀬敏明

被告

田園都市開発株式会社

右代表者代表取締役

主文

一  原告が、別紙物件目録≪省略≫一記載の建物並びに同目録二及び三記載の各土地の所有権を有することを確認する。

二  被告は、原告に対し、被告を原告、日本相互住宅株式会社を被告とする東京地方裁判所平成一一年(ワ)第二二九〇三号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件につき同裁判所が同年一二月六日言い渡した判決による別紙物件目録一記載の建物並びに同目録二及び三記載の各土地に関する別紙登記目録≪省略≫一記載の各登記の抹消登記手続請求権を有しないことを確認する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

一  請求

主文同旨

二  原告の主張(請求原因)

1(一)  Cは、別紙物件目録一記載の建物並びに同目録二及び三記載の各土地(以下、右建物及び右各土地を併せて「本件不動産」という。)をもと所有していた。

(二)  日本相互住宅株式会社は、昭和六二年一〇月五日、Cから本件不動産を買い受け、右売買を原因とする別紙登記目録一記載の各登記(以下、併せて「本件各登記」という。)を了した。

(三)  原告は、平成一二年一月一三日、日本相互住宅株式会社から、競落により、本件不動産を取得した。

2(一)  被告は、平成一一年一〇月一四日、日本相互住宅株式会社に対し、本件各登記の抹消登記手続を求める訴訟(東京地方裁判所平成一一年(ワ)第二二九〇三号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件。以下「別件訴訟」という。)を同裁判所に提起した。

(二)  東京地方裁判所は、別件訴訟の提起を受けて、本件不動産につき、別件訴訟の提起を原因とする本件各登記の抹消予告登記を嘱託し、平成一一年一〇月二八日、それぞれについて、別紙登記目録二記載の各登記(以下、併せて「本件各予告登記」という。)がされた。

3(一)  別件訴訟においては、平成一一年一二月六日、被告(別件訴訟原告)勝訴の判決(以下「別件判決」という。)が言い渡され、同月二五日、別件判決は確定した。

(二)  被告は、右確定後、遅くとも平成一二年一月一三日までの間に、明示又は黙示的に、別件判決に基づく本件各登記の抹消登記手続請求権を放棄する旨の意思表示をした。

4(一)  被告は、本件不動産は自己の所有であると主張し、その所有権を争っている。

(二)(1)  原告は、本件不動産に本件各予告登記が経由され、抹消されずに残存しているため、これを理由に、担保権の設定はもとより、本件不動産を売却をすることができない。

(2) 本件各予告登記を抹消するためには被告が本件各登記の抹消登記請求権を放棄したことを証する書面が必要であるから(不動産登記法一四五条二項)、原告は、被告が本件各登記の抹消登記請求権を有しないことの確認判決を取得する必要がある。

5  よって、原告は、被告に対し、

(一)  本件不動産の所有権の確認を求めるとともに、(二) 被告が本件各登記の抹消登記請求権を有しないことの確認を求める。

理由

一  (1) 被告は、平成一二年五月一九日に開かれた第一回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出せず、(2) 原告は、同年六月一六日に開かれた第二回口頭弁論期日において、本件不動産の所有権の確認を求める訴えに、被告が本件各登記の抹消登記手続請求権を有しないことの確認を求める訴えを追加する旨の請求の趣旨等追加申立書を陳述したが、被告は、右期日前に右申立書の送達を受けながら、請求棄却の判決を求め、訴状及び右申立書記載の請求原因事実のうち原告の本件不動産の所有権取得原因事実や被告による本件各登記の抹消登記手続請求権の放棄の事実を否認し、又は争う趣旨の答弁書を提出しただけで、右期日に出頭せず、(3) 同年七月二八日に開かれた最終口頭弁論期日にも出頭しなかった。したがって、被告は、請求原因事実を争うことを明らかにしないものと認めるよりほかはなく、これを自白したものとみなす。

二  なお、原告は、本件不動産の所有権の確認と併せて、被告が本件各登記の抹消登記手続請求権を有しないことの確認をも求めるので、右確認請求に係る訴えの利益につき、若干検討する。

不動産登記法は、予告登記の抹消方法としては、一四五条一項又は三項による方法のほか、「第三条ニ掲ゲタル訴ニ係ル確定判決、和解、調停其他確定判決ト同一ノ効力ヲ有スルモノニ依リテ確定シタル登記ノ抹消又ハ回復ヲ請求スル権利ヲ抛棄シタルコトヲ証スル書面」を裁判所書記官に対して提出し、裁判所書記官が予告登記の抹消を職権で嘱託する方法(一四五条二項)を定めているところ、「権利ヲ抛棄シタルコトヲ証スル書面」には、その文言上、登記の抹消又は回復を請求する権利をその権利者が放棄したことを内容とする権利者作成の書面のほか、当該不動産の所有名義人が、登記の抹消又は回復を請求する権利を有することが確定された者に対し、右権利を有しないことの確認を求め、この者が右権利を放棄したことがその理由中で認定された右権利不存在確認請求の勝訴確定判決も含まれると解すべきである。

原告は、被告が本件各登記の抹消登記手続請求権を放棄したことを請求原因として、右請求権を有しないことの確認を求めるものであり、理由中において、右請求原因事実を認めた上で、原告の請求を認容する判決が確定すれば、この判決は、右に説示したように、不動産登記法一四五条二項にいう「権利ヲ抛棄シタルコトヲ証スル書面」に当たり、裁判所書記官は、原告からその提出を受けた場合には、本件各予告登記の抹消を嘱託すべきことになる。

したがって、原告には、被告が本件各登記の抹消登記手続請求権を有しないことの確認を求める訴えの利益がある。

四  以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから、これを認容し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 綿引万里子 裁判官 生野考司 大寄麻代)

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